「日本はワクチンへの警戒が根強く、普及に遅れか」ブルームバーグが伝える

ワクチンの副反応に関する報道などが、不安感を根付かせた要因になったと指摘している。
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ワクチンに関する苦い歴史が、日本にとってコロナとの闘いの障壁となっている――。アメリカの経済メディア「ブルームバーグ」が12月23日、こんな見出しの記事を掲載した

はしか、おたふく風邪、風しんのMMRワクチン(新三種混合ワクチン)接種で副反応が多発し、使用中止となったことや、HPVワクチン接種をめぐる副反応の問題がマスコミに大きく取り上げられたことなどが、ワクチンに対する不安感を根付かせた要因になったと報じている。

日本語訳の記事では、そうした背景から、「(ワクチンの)普及が他の先進国に大きく後れを取るとの見方が広がっている」と伝えている。

「日本は世界で最もワクチンの信頼度が低い国」

ブルームバーグは、世界各国のワクチンへの信頼度を調査した医学雑誌「ランセット」の研究結果を紹介。また、36%が新型コロナウイルスのワクチンを「接種したくない」と回答したNHKの世論調査結果を引用し、「日本は世界で最もワクチンの信頼度が低い国の1つ」だと伝えた。

同紙は、ワクチンへの不信感が強い背景として、過去の「薬害事件」が影響していると指摘している。MMRワクチン(新三種混合ワクチン)の副作用として無菌性髄膜炎が1000人に1人の割合で発症し、定期接種が1993年に中止されたことや、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)接種後に重篤な副反応が報告されたことを受け、厚生労働省が積極的な勧奨を差し控えることを決定したことなどを挙げた。

「日本政府は、国民の信頼を損なわないよう慎重に審議を進める必要がある」と指摘し、ワイドショー番組などの報道による影響を懸念する専門家のコメントも紹介した。

黒人の間でも不信感は強い

ワクチンをめぐっては、イギリスや米国で接種が始まっている。

一方で、米国でも、黒人の35%がワクチンを「おそらく接種しない」あるいは「絶対に接種しない」と回答するなどのワクチン不信が存在することが報告されている。その背景には、黒人を対象に行われた梅毒の人体実験「タスキギー実験」などの差別の歴史が影響している。

日本では、厚生労働省が、医療従事者や高齢者、基礎疾患を持つ人を優先的に接種対象とする体制を整備している。ワクチンが承認され次第、医療従事者は2021年2月下旬以降、高齢者は3月下旬に接種体制を確保する方針だ

厚労省は、「安全性・有効性を最優先とするため、予断を許さない」している

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