春から続く電気料金の値上がりの影響を受けていない「街」が、さいたま市緑区にある。今春から入居が始まった太陽光発電の地産地消を追求するモデル地区だ。どんな生活なのか。未来への挑戦の現場を訪ねた。
◆発電の予測を基にして
1〜6歳の子ども3人が保育園に行った後、静けさに包まれたダイニング。会社員の大橋健人さん(35)はいつも朝の食器洗いをこなす前に人工知能(AI)に声をかける。
「アレクサ、Looop タブレット開いて」
テーブルの上のタブレットの画面がぱっと変わり、青や紺色の色分けが表れる。その日の太陽光発電量の予測を基に決められた、時間ごとの電気料金のグラフだ。5円刻みで3段階。最も安い1キロワット時当たり20円は水色だ。「食洗機をどのタイミングでスタートしようかなって考えるときとかに見ますね」
◆ガス代も節約
太陽光発電パネルは51戸並ぶ一戸建て住宅全てに載っている。電気は、できる量も時間も天候で決まる。だから、街の配電を担う新電力「Looop」は、時間帯で変わる料金によって、できるだけ発電の多い昼間に家電を使ってもらえるように促している。
余った電気は、夜などに各家庭が使えるよう、同社で街の1区画にあるチャージエリアの蓄電池と電気自動車(EV)2台にためる。昼のうちに電気で家々の給湯器のお湯を沸かし、ガスの消費も節約できる。
大橋さん宅はIHキッチンで、子ども服の夜の洗濯乾燥も欠かせず電気代は月に1万5000円を超える。だが、世間の電気代高騰を招いた燃料費等調整額はゼロ円。電気を街でつくっているのに加え、外から買うのも再生可能エネルギーのため、燃料代の価格変動に影響を受けないためだ。ガス代は1000円余り。マンションから3月に引っ越して家が広くなり、妻の美由樹さん(36)は光熱費の増加を予想していたが、今のところ「トータルはそんなに変わらない」という。
◆バイデン政権の閣僚も視察
街の開発は、さいたま市の「スマートシティさいたまモデル」の一環だ。市は2009年からEV普及に努め、11年の東日本大震災による計画停電も経験したことから、二酸化炭素(CO2)排出が少なく、災害に強い街を目指した。
少ない冷暖房で快適な室温を保てる高断熱高気密の家造りの実績がある地元の高砂建設など住宅メーカー3社が参画。16年度に整備した第1期の街区から家の省エネ性能の高さや太陽光発電、電線地中化などを特長にしてきた。
都心直結...
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