中国製ワクチンは「効果小さい」 中国当局者が発言、すぐ修正

Various medical syringes seen with Sinovac Biotech company logo displayed on a screen in the background.

画像提供, Getty Images

画像説明, 中国のビザを取るには中国製ワクチンの接種が必要だ

中国の疾病対策当局は、中国で開発された新型コロナウイルスのワクチンについて、効果が小さいとの見方を示した。中国当局が弱気なところを見せるのはまれだ。

中国疾病対策センター(CCDC)トップの高福氏は10日の記者会見で、ワクチンを混ぜ合わせて有効性を向上させようと検討していると述べた。

中国ではこれまで、4種のワクチンが開発され、使用が認められている。国内の1億人以上が、少なくとも1回はワクチン接種を受けている。

ただ、外国での臨床試験では、中国製ワクチンの効果は50%程度しかないとする結果も出ている。

<関連記事>

中国政府は、自国製ワクチンの有効性を主張。外国人へのビザ発給については、中国製ワクチンを接種した人だけが対象になるとしている。

高氏はその後、自分の発言が誤解されたと話した。

当局トップの発言

高氏は10日の記者会見で、中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と述べた。

また、効果を高めるため、新型ウイルスのいくつかのワクチンを混合させることを、政府として検討していると示唆した。

さらに、ワクチン接種を「最適化」させる方法として、接種回数や期間の変更などが考えられると説明。別のワクチンと組み合わせる可能性にも言及した。

動画説明, 中国製ワクチン、今分かっていることを解説

発言を修正

しかしその後、高氏は自らの発言を軌道修正。国営の英字紙・環球時報(グローバルタイムズ)に、「世界のすべてのワクチンが、予防効果の高い時があれば低い時もある」と述べ、こう続けた。

「どのように効果を高めるかという問いは、世界中の科学者が考えなくてはならない」

また、中国製ワクチンの予防効果が低いとした発言については、「完全な誤解だ」とした。

中国メディアの大部分は、高氏の発言を取り上げていない。

ただ、ソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」では、高氏の当初の発言に対する批判が出ている。一部は高氏について、「話すのをやめる」べきだと主張している。

中国ワクチンの現実

中国製ワクチンについては、データが外国にほとんど公表されていないため、有効性について長期間、不明確なまま。

同国のワクチン「シノヴァク」は、ブラジルでの臨床試験の結果、有効性は50.4%とされている。これは、世界保健機関(WHO)がワクチン承認の条件としている50%をわずかに上回るものだ。

トルコとインドネシアで実施された後期臨床試験の中間結果では、シノヴァクの効果は65~91%とされている。

一方、独ビオンテックと米ファイザーが共同開発したものや、米モデルナ製、英アストラゼネカ製など欧米のワクチンはすべて、90%前後かそれ以上の効果が示されている。

他国のワクチンとの違い

中国で作られるワクチンは、特にファイザーやモデルナが開発したワクチンなど、一部のワクチンと大きく異なる。

中国製のものは「不活化ワクチン」と呼ばれる。病原性(毒性)を完全に消滅させた、重症化リスクのないウイルスを免疫システムに植え付けるもので、より伝統的な方法を採用している。

これに対し、ファイザーやモデルナのワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれる。新型ウイルスの遺伝子コードの一部を人体に接種し、免疫システムの対応力を鍛える方法を取っている。

vaccines
Presentational white space

アストラゼネカ製のものは、これとは異なる。チンパンジーから採取した風邪のウイルスに、新型ウイルスでみられる遺伝物質を混入させている。このワクチンを接種することで、実際の新型ウイルスとの闘い方を、免疫システムに学ばせるという仕組み。

中国製ワクチンの大きな強みの1つが、摂氏2~8度の一般的な冷蔵庫で保管できる点だ。モデルナ製はマイナス20度、ファイザー製はマイナス70度での保管が必要だ。

中国は自国製ワクチンを世界各地に提供している。インドネシア、トルコ、パラグアイ、ブラジルなど諸外国には、すでに何百万回分ものワクチンを出荷している。