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多様な業界に適切な分配を タクシー会社「未来都」代表 笹井大義さん(30)

タクシー会社「未来都」代表の笹井大義さん=10月18日、大阪府守口市
タクシー会社「未来都」代表の笹井大義さん=10月18日、大阪府守口市

「限界です」。新型コロナウイルス禍のこの1年半、何人のタクシー運転手が疲れ果てた表情で、そう打ち明けてきただろうか。ある男性運転手は1日で大阪市内を170キロ走らせたが、ついに客はつかまらなかった。「売り上げがゼロの日が続き、きょう明日の生活も苦しい」。運転手の多くがそんな切実な思いで過ごしてきた。

タクシーの需要は社会の動きに大きく左右される。緊急事態宣言や蔓延(まんえん)防止等重点措置によって、飲食店の営業自粛や会社の在宅ワークなどが進めば、利用はおのずと減る。繰り返される「場当たり的な」発令と解除に、振り回される経営。そんなコロナ禍のタクシー業界に、政治が真摯(しんし)に目を向けてくれたとは到底思えない。

未来都(大阪府守口市)では、大阪市内を中心にタクシー約600台を運行しているが、1回目の宣言が出た昨年4月は、通常の1割まで売り上げが激減。従業員の生活を守るため、これまでの資本を切り崩しながら全台数を稼働させたが、会社の維持もぎりぎりだ。給料の前借りを申し出る運転手も相次ぎ、生活苦から鬱病を患う人もいる。

営業収入は今でこそ8割まで持ち直したが、国のコロナ対策のおかげとは思っていない。コスト改善やアプリケーションを活用した配車システムの導入など自社努力によるものだ。倒産に追い込まれた同業他社の話を耳にするのも、きりがない。

運賃による収入が主なタクシー会社に、飲食店のような補助金があってもよかったのではないかと思う。タクシーは電車やバスと同様に公共交通機関だ。車を運転できず、駅まで歩いていくことも難しい高齢者や妊婦らの足となる。

新しい政治家には、苦境に立たされている多様な業界に目を向け、適切な分配を行う姿勢を求めたい。

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